最終的に得られた物は何か〜デンマークでのアーティストインレジデンス体験記(4)〜

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デンマークのアーティストインレジデンス体験記第3回(バックナンバー:第1回第2回第3回)
当初の締め切りであった5/15は過ぎたが、日本時間で土曜日の16時まで締め切りを伸ばしたらしいので、迷ってた人は応募して欲しい。締め切りを伸ばすということはもう少し応募者が欲しいのであろう。既に何かを作ってる人ならば応募に必要な5ページの企画書も1日で準備できるはずだ。(おそらく内容の大半はストーリーボードやスクリーショットになるだろうから。)

個別面談で分かった新たな課題

最終日のピッチが終わると、あらかじめ希望していた2人の審査員と個別面談ができた。まずは大手パブリッシャーのヨーロッパ支社のビジネスデベロップメントマネージャーから。海外では評価の分かれるトゥーンシェーダーのキャラクターについての感想を聴いたら、好印象だったようだ。「ノーモアヒーローズ」や「キャサリン」を思い出させると。(こういうことがあるとトゥーンシェーダーのゲームで海外市場を開拓してくれた先人達に敬意が湧いてくる。)また、ピッチの中ではあえて予算を見せなかったのだが、僕が想定していた1億円以上の予算については、「インディーでもこのくらいは当然。5億円かかってるゲームもある。」という反応だった。ただし、ゲーム内容にはついてはSteamで埋もれない特徴がもっと欲しい、また今回でっち上げたようなスクリーンショットじゃなくて実際のゲーム画面のグラフィックスを観たいということで、引き続き連絡取り合うことにした。次に会ったのは北欧の映画向け投資会社のゲーム部門の担当者だった。この方もやはり同様にゲーム内容についてもうちょっと知りたいとのこと。これはプロトタイプも見せられないんじゃ当然の反応だと思う。そして「既に何かリリースしているチームを探している」と言われた。僕はこれに該当しない。「そもそもチームを作るお金もないのだ。」と言ったら「無償で参加してくれる友達を見つけるんだ。」と言われた。これは身も蓋もないと感じたが、そもそもインディーゲームというのは友人同士の活動から始まると考えると当たり前の感覚なのだろう。しかし、僕のような株式会社として最初からビジネス目的でやってるとどうしても「無償で参加して欲しい」とは言えない。会社の仕事と完全に切り離してまずは余暇活動として始めるという手もあるのだが、それが出来るのは20代前半のうちだろうなあと感じる。とは言え、最初に話した大手パブリッシャーの人も「今は一人で作ってるのか?」とその辺のことを気にしていた。確かに、投資する側としてはチームとして最後まで作りきれる体制になってるかはリスクとして重視するだろう。会社に人雇ってチームというものを作らなきゃいけない、人を雇うためにこれまで1人でやって来た仕事を複数人の仕事にスケールアウトして行かなきゃならない。まずはそれからだ。それまでずっとDIY精神で1人でやって来たところから大きく価値観と方針が変更された。自分のプロジェクトについてすぐに資金調達とならなくても、これでデンマークまで来た意味があったというものだ。この日の夜には、審査員が選んだ受賞者の発表があった。僕は選ばれなかったが、それは大した問題ではない。余談だが、授賞式の後のパーティで審査員の1人だった日本の某有名広告代理店の方が「僕が興味を持った作品は最終的には選ばれなかった。選ばれなかった作品にも良いものはある。」と言ったので、「受賞することが目的じゃなくて最終的に資金調達できるかどうかなので、継続的にやるべきことをやるだけですよ。」というようなことを話したら、「必要な努力が違うのは分かる。けど資金調達目的とした仕事は続けながらも、ここではここ用にウケるもの用意して受賞もできちゃったらそれはカッコいいんじゃない?両方目指しても良いんじゃない?とても難しいことだって分かるけど。」と言われた。皆が知ってるあの会社のパワーを垣間見た気がした。特徴的な社風とか僕と絶対合わないと思うけど、その「総取り」の精神は見習いたいとは思った。

帰国の前日は半日オフだったのでとにかく色んな所を歩き回った。本当に住みたいと思わせる街。

アニメーションフェスティバルの目玉となった手塚治虫展。日本のアートが尊敬されていることを忘れてはならない。先人たちの努力を無駄にしてはならない。

「この世界の片隅に」の展示

街の名物である大聖堂の中

その大聖堂に隣接するギャラリーではガンダムのコンセプトアートの展示。これは嬉しい。

結局今は何をしてるのか

 
実の所、帰国してから自分のプロジェクトは全くと言って良いほど進んでない。契約している他社プロジェクトの仕事に意識を集中させていた。それも絶対に失敗するわけにはいかない。前に作ってたゲームを開発中止にしたことなどの影響により、会社の財務も酷い状況になっていたので、それを整理することに時間を割いたりもした。また、1人でやってた会社をチームとして編成するためにインターンの募集してその指導にあたっていた。そして最近ようやく少しずつまたプロジェクトの方に時間を割けるようになった。なかなか道のりは遠いが、前のプロジェクトと違って焦燥感はない。以前はUnityですぐにプロトタイピングして、それがすぐにゲームとして完成するかのような錯覚に囚われていたのだが、心落ち着くデンマークのあの環境の中で、焦らずに企画の段階からじっくり考えること、様々な検証をすることを学ぶことができた。この記事を書いてるたった今決まったことなのだが、今年のNipponNordicにはスタッフとして参加できることになりそうだ。そこでも昨年と同様にパブリッシャーと出会う機会があるはずなので、今度こそはプロトタイプを見せたいと思っている。チーム編成についてもArsenaletに入居しているフリーランスのアーティストやThe Animation Workshopの学生の中に一緒にやれる人がいないか探してみるつもりだ。将来的にViborgに支社を作るつもりで、継続的に関係を深めていきたい。このようにアーティストインレジデンスの経験は、その場で完結するものではなくその後のキャリアに長期的にポジティブな影響があると思う。もし今年の応募に間に合わなくても、これを読んで興味を持ったなら来年への参加もじっくり検討して欲しい。時間を割いて4回に渡って書いたこの体験記が誰かの役に立ったら幸いである。なお、当時のTwitterのログを見ると向こうでの暮らしぶりなど参考になると思う。ここに載せなかった画像も見られる。

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