「ファイナルファンタジー アギト」のサービス終了について思うこと

先月末のことだが、1つのスマフォ用ゲームがサービス終了した。BFBが順調にサービス継続されFF11でさえ未だに続いているが、自分が開発に大きく関わったゲームが市場から消えて一切プレイができなくなるという体験は初めてであった。(コーエー時代に関わった「三國志 Online」もサービス終了しているが、あれは開発ではなく運営として関わっていたしそこまで中心的なポジションではなかった。)

僕は2012年末のプロジェクト立ち上げからサービス開始直前の2014年3月までFFアギトの開発チームにいて、主に戦闘部分の仕様設計とプログラム実装を行っていた。サービス終了のこのタイミングで自分にとってこのプロジェクトは何だったのかを色々と振り返ったので、それをここに記す。ここではギョーカイ評論家の人達が喜びそうな話をするつもりはない。2年経たずにサービス終了したからには商業的な失敗と言わざるを得ないが、何が原因で失敗したとかの分析はここでは一切やらない。もちろん仕事としてゲームを作ってる以上、反省や分析は行っているが、それを公開してもギョーカイ分析芸人の皆様をただ喜ばせるだけだし、途中でチームを抜けた人間がそれをやってるのを見たって最後までこのゲームの運営・開発に携わった方達は良い気はしないだろう。自分にも他者にもメリットが全然ない。今自分にとって最も大切なことは、この失敗したFFアギトにも一定数のファンの方達がいたこと、サービス終了を惜しむファンの中に、自分に温かい声をかけてくれた人がいたことである。今回はその人たちのために何か書こうと思った。

また、一緒に仕事をしたスクエニの方達のことは尊敬しているが、具体的にどのようなやりとりがあったかもゲーム業界オタクの人たちを喜ばせるだけなので、割愛する。よって必然的にスクエニの方達の成果についてはあまり言及できない形となってしまうことをご了承いただきたい。スクエニの方達の努力があり、その成果があったことは十分に認識しているし、尊敬していることだけは伝えたい。

プロジェクト参加の経緯

2012年末にBFBがリリースされた。当時の主幹開発会社は株式会社たゆたうで、僕はゲームデザイナーとしてたゆたうと業務委託契約を結んでBFBの中心的な部分を作っていた。当時のたゆたうとの契約は必要な作業単位での契約であり、作業が段々と落ち着いてくる開発後期にはパートタイムの仕事になっていたし、BFBが完成したら次はどうなるかも分かっていなかった。BFBの開発が終わる頃、たゆたうから「スクエニとの新しいUnity案件が始まるから、BFBと並行してそちらにも参加してくれないか?」という話を頂いた。僕は以下の点を鑑みてプロジェクトへの参加を決めた。

  1. 目標だったオリジナルゲーム開発のための資金が足りない
  2. BFBはなんとか作れたが、Unityで1人でゲームを作り切るスキルも足りない
  3. 上記2点のために1年単位のまとまったUnityの仕事がしたかった
  4. スクエニ在籍時の待遇が酷かったのでいつか見返してやりたいと思っていた
  5. FFに思い入れがあり、もう一度くらいFFに関われたらと思っていた
  6. BFBに対しても、もっと貢献したいと思っていた
  7. たゆたうに常駐するならBFBの仕事ももっとやれると思った

当時は船橋の自宅で仕事をしていたが、たゆたうに常駐することになったために、たゆたうから徒歩5分の所に部屋を借りて、平日はそこから通うことにした。

チーム内におけるポジション

たゆたうの社員でもスクエニの社員でもない僕は、両社における分業制度の範疇外となり、両社でプランナーと呼ばれる人達がやってる仕様考案や設計の仕事とプログラマーの仕事である実装の両方を手掛けた。自分で思いついたアイディアをすぐにプログラミングして、ゲームとして動く形でスクエニに対してプレゼンする。このやり方のおかげで開発初期のプロトタイピングでは大きな成果が出た。BFBとこのプロジェクトで実績のあったこの仕事スタイルのメリットについては2014年のCEDECで紹介し、大きな反響をいただいた。

Game Watch 記事【CEDEC 2014】雑用ばかりの「プランナー」から脱するには?

FFアギトで目指したこと

FFアギトはPSPで出た「ファイナルファンタジー零式」のフランチャイズ展開という企画だった。僕はFF零式については、とてもスピード感ある戦闘が印象として残っていた。「クラスゼロ」と呼ばれる少年少女の戦闘エリートが戦場を素早く動き回り、武器や魔法を駆使して勢いよく敵を「殲滅」して行くのがFF零式の魅力だと思っていた。FFアギトの戦闘の内容について最初に提案する機会があった時、僕は迷わずターン制の戦闘ではなくAIがリアルタイムでFF零式と同じようなテンポの戦闘を繰り広げるデモを作った。その内容がスクエニからも好評いただけてFFアギトの戦闘の原型ができた。そこから先はスクエニの方達と一緒にUIの試行錯誤の連続だった。そのスピード感ある戦闘をスマフォゲームユーザーに気軽に楽しんで貰うためにUIや行為に対するフィードバックの表現を改善していくというのが、プロジェクトを通した目標になった。

自分には思いつかなかった「アビリティチェーン」

FFアギトでは、プレイヤーは武器による技や魔法などの「アビリティ」を用いて戦う。海外製のPC用MMORPGなどでよく見る画面下部に並ぶアイコンをタップすると「スキル」が発動するあれである。僕自身そのようなゲームが好きなこともあり、デファクトスタンダードであるそのUIを踏襲することにした。画面下部にボタンとして並ぶアイコンをタップすればアビリティが発動するのである。しかし、ここで問題があった。戦闘中に多くのアビリティを使えるようにしないとプレイヤーが取り得る戦略が広がらないが、そんなに多くのアイコンを画面上に並べることはできなかった。そこでスクエニの方達と何度もミーティングして、試作を繰り返して生まれたのが、1つのボタンの中に連続して発動する複数のアビリティをセットできる「アビリティチェーン」の仕組みだった。例えばMMORPGをプレイしていると、魔法使い系のクラスのプレイヤーが同じタイミングで複数の種類のバフ(強化)スキルを発動するのをよく目にすると思うが、使いたいタイミングが同じアビリティというのは必ずある。それらをひとまとめに発動できるようにして、画面上のボタンの数を減らすことと戦闘に持っていけるアビリティの数を増やすことを両立できた。また、攻撃系アビリティの連続発動はゲームプレイにFFらしい派手さを加えてくれた。実は最初このような提案を受けた時に僕はあまり乗り気ではなかった。どうしても戦闘のUIやアビリティの位置付けをPC用MMORPGのスタンダードに近づけたいという思いがあった。それは長続きするゲームのモデルでもあったし、確実に面白さがわかっているものに近づけて失敗を防いでからゲームバランスを作り込むことでゲームプレイのクオリティアップを図りたいという狙いがあった。結果的には、前述したように連続発動によってスピード感が向上し、ボタンが減ったことでPC用MMORPGなどに馴染みのない人もプレイしやすくなった。これに関してはスクエニとのコラボレーションの1つの成果だと思っている。自分の好きなゲームの姿に囚われないということを1つ学んだ。

ユーザーテストでの確信

開発期間の後期において、プロジェクトの部外者にテストプレイして頂く機会があった。その時、何の説明をしていないのにも関わらず前述のアビリティを駆使してゲームを進めていくテスターの姿を見て鳥肌がたった。プロジェクト上様々な課題は残っていたのだが、このゲームは通用する、受け入れられるという自信がついた。結果的には失敗したゲームであったが、このテストプレイの時からサービス終了の時まで、ゲームプレイそれ自体の評価は決して低くなかったということを伝えておきたい。

リリース直前のチーム離脱

そのように開発に深く関わっていて最後にこんな文章書くくらいには思い入れのあったゲームであったが、リリースの直前に開発会社たゆたうとの契約を終えて開発チームから離れることになった。理由はいくつかある。

  1. たゆたうの近所に部屋を借りていたのは期間限定と思っていたから
  2. 度重なるリリースの延期でその期間が延長されていた
  3. オリジナルゲームの開発を2014年から始めたかった
  4. 並行して参加していたBFBの開発・運営がたゆたうから他社に移管された
  5. スクエニ及びたゆたうがBFBの都合を一切考慮してくれなくなると考えた

当初の考えでは、ゲームがリリースされたら一区切りして、その後運営・開発に参加し続けるにしても100%ではなく30%くらいの関わり方にするつもりだった。しかし、そのリリースがいつになるか分からなくなってしまったため、リリースを迎える前に区切りを付けることにした。また、当時の状況では100%参加するか0%とかどちらか一つであり、時間を減らして関わり続けるという選択肢はなかった。リリース直前にチームを抜けるのは迷惑と思う人もいるだろうが、当時はゲームデザイン自体は既に終わっていて、その実装を僕以外の専業のプログラマーがリファクタリングするという段階だったので、仕様書さえあれば僕がいなくてもなんとかなった。その当時僕が心配していたことは僕がいなくなってゲームがダメになることではなかった。むしろこのゲームが大成功した時に僕がチームを抜けたことを後悔しないだろうかということだった。最後の最後まで、僕はこのゲームの成功を信じていた。

リリース後の評判

結局FFアギトは2014年の5月にリリースされたのだが、当時としてはハイスペック過ぎてプレイできる端末が限られたこと、それまで類を見ない膨大なサイズのデータを扱うために、通信時間やロード時間などでストレスを与えてしまったことなどが災いして、ゲームプレイ以前の問題として叩かれてしまった。また、僕の作った戦闘の部分にしても、PSPのFF零式のアクションのクオリティが高かったため、同じように自分でキャラクターを操作して戦うのを期待していた人たちからの評価は芳しくなかった。FF零式のファンはこのゲームのリリースと同時に絶対飛びついたはずなので、最初の評価としては当然覚悟していた。そしてその不満というのが僕にも直接ぶつけられることとなった。

僕にしかできなかったこと

スクエニの社員でもたゆたうの社員でもない、そして既にチームを抜けている僕は、Twitterで唯一FFアギトの開発スタッフだったことを公言してゲームについて自由に発言していた。そのため、ゲームに不満がある人たちからも目につく存在となった。忘れられないのは、FFアギトの戦闘がFF零式の戦闘と違うことに不満があったある一人のユーザーである。その人は最初とても厳しい口調で僕に意見を寄せてきた。それに対して僕はじっくりとFFアギトの戦闘の実装意図について説明をした。すると段々と分かってきてくれて、最後には「応援してます」とまで言ってくださった。また、他にもFFアギトに不満があるというのをきっかけとしてよく話をするようになって、今でもゲーム以外の話題で交流が続いてる人がいる。自分のゲームをプレイしてくださった人とはできるだけ交流したいと常に思っている。こういうことがあったから評判は別としてFFアギトを作ってよかったと思っている。これから作るゲームでその人たちを楽しませたいと思う。

このプロジェクトから得たもの

FFアギトはリリース時の躓きから大きくユーザー数や売り上げを増やすことができずにサービス終了を迎えた。リリース後の運営・開発についてどのような意思決定があったかは僕には知る由もないし、知っていたとしてもそれを批評したくはない。確かなことは僕はこのゲームを作ることを楽しんだし、このゲームを作る過程でスキルアップできたし、ユーザーの方を含めていろんな方と知り合えたし、得るものが多かった。もちろん、このゲームをプレイして残念に思った人たちのことは忘れてはならない。商業的な失敗について自分の責任が全然ないとはいえない。しかしその失敗についても「ここまで予算が大きく有名なIPで失敗した」という経験はなかなかできるものではない。改めて、スクエニにもたゆたうにもユーザーの皆様にもお礼を申し上げたい。そしてこの恩返しというのはこれからもゲームを作り続けることで果たして行きたいと思う。FFアギトの開発を抜けてまで作り始めたGDH2030というゲームを来年は必ずリリースさせる。

今後の課題

プロジェクトの失敗は抜きにして自分のゲームの作り方や仕事の進め方は間違っていたか?と聞かれれば、それは良いところも悪いところもあったとしか言いようがない。Unityでのプロトタイピングは確実に成果があったものの、プロトタイプから内容を膨らませていく段階において、効率の低下があったのは事実である。現在開発中のGDH2030においては適切なタイミングでリファクタリングを行うなど効率化を図って既に成果が出ている。その辺の話については今年のUniteで話をすることができた。

ゲーム開発の. 始め方、育て方、終わらせ方. 「Game Dev Heroes」. における生産性チャレンジ

スライドはこちら

Unityによる開発の効率化はまだまだ改善の余地がある。せっかくUnityを使っているのにFFアギト以上に非効率な開発になってしまうこともある。これからの自分の仕事を通してUnityやその他ゲームエンジンの上手い使い方を伝えていけたら良いと思う。全てはもっと面白いゲームを作るために。

「ファイナルファンタジー アギト」のサービス終了について思うこと」への2件のフィードバック

  1. ごんべ

    初めまして、たまたまアギトに関してweb検索を掛けていたらこちらのブログを見つけ拝見させて頂きました。
    実際にプロジェクトに参加していた方の思いだったり、少しばかりの経緯が見れて安直な言葉かもしれませんが、感動しました。
    元々アギトをプレイしていた身でもあるのですが、個人的には運営の仕方も含め凄く評価の低いゲームでした。
    しかし実際に開発に携わった方のお話が見れてアギトと言う一つのゲームに対しての見方が変わりました。
    デザイナーではありませんが、自身も何かしらゲーム開発に携わりたいと言う将来の夢があるのでファイナルファンタジーシリーズのゲームに携わっていたとは、とても尊敬します。
    これから応援させて下さい。

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