EMPERORのIhsahnを見た話

「あの」EMEPRORの中心人物であるIhsahnが来日していて渋谷でライヴやるらしいという話をライヴ前日の夜に初めて知り、当日は仕事を終えてから会場に電話して当日券の有無を確認してから会場に急行した。

EMPERORへの想い

人生に渡る価値観を決める20代前半の時、僕はMANOWARのような正統派ヘヴィメタルだけでなくブラックメタルにも夢中になっていた。それまで音楽と言えばエレキギターだけだった僕が、Macを手に入れシーケンサーとサンプラーでオーケストラの真似事をしようとしたのはシンフォニックブラックメタルの影響だ。中でもEMPERORだけは絶対的な存在であり、ソングライターでフロントマンのIhsahnが10代半ばで数々の名曲を作曲した事に驚き感服していた。

もちろんライヴもずっと観たいと思っていたのだが、EMPERORとしての来日はこれまでに一度も実現せず、Ihsahnとしても2011年の初来日は僕自身が震災の影響で仕事失ったりして余裕がなくて見逃していた。そして今度もまた見逃しそうになったのだがなんとか間に合った。

知恵の樹の実を食した者

かつて鎧を身に纏い、皇帝として全世界のエクストリームミュージックシーンから畏怖されていた男は、眼鏡をかけ生真面目なエンジニアのような顔をしてそこにいた。そこにいるのは本当にあのIhsahnなのだろうか。しかしギターの構え方、プレイ、声に変わりはなかった。

客に向って頭を下げ、MCではニコニコしていても、やはり何か人間離れした存在感があった。何かが違う。圧倒的な創造性は滲み出ていた。その創造力故に神から疎まれる存在。知恵の実を食べてしまった人間。それは実在する。

Samothを思い出した

もちろんEMEPRORが好きな僕はEMPERORの曲を期待して行ったのだが、実際やってくれてもあまりピンと来なかった。音響が悪かったのもあるが、ちょっと迫力に欠けた。アマチュアバンドのコピーのようだった。IhsahnだけでなくSamothのギターがあってこそのEMPERORなんだと再確認した。リードプレイを担当するIhsahnがオーソドックスなギターサウンドなのに対してバッキングに専念するZamothはBOSSのMT-2をMarshall JCM-800に繋いだような極端にドンシャリな音。だからIhsahnが1人でリフ弾いた後にSamothがユニゾンで加わるというEMPERORの曲でよく見られる展開が引き締まったんだと思う。

ブラックメタルが教えてくれた事

驚いた事が1つあった。EMPERORの曲を含めてアップテンポの曲、ブラストビートの曲もけっこうやったのだが、モッシュやサークルピットが一回も発生しなかった。エクストリームミュージックのライヴでこの光景は初めて観た。エクストリームは暴れるためのBGMではなくアートとして鑑賞の対象に成り得る。それはまさしくEMPERORやULVER等北欧ブラックメタルが教えてくれた事だった。この日本ではブラックメタルはメタルファンからは全然評価されていなかったが、数は少なくてもその文化を理解し、敬意を持って鑑賞する人達が確かに存在するのを確認して僕は満足した。これからもIhsahnやその他「元ブラックメタル組」の音楽を聴き続けよう。

 

 

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